「負けた教」の信者たち
私の読書タイムの最大の時間帯は、通勤の電車のなかなんですが、お風呂の時間も、貴重な?読書タイムです。ちょっと、読みやすい新書や文庫をもちこんで、お風呂につかりながら、読みます。いま、読んでいるのが、この『「負けた教」の信者たち』。ご存じ斎藤環さんの新書。
この人の議論は、聞いておきたいなと思う論者が何人かいる。大手メディアに出るような人で言えば、姜尚中さんだとか、藤原喜一さんとか。社会問題で言えば斎藤環さんもその一人。ひきこもりの第一人者でもあります。
この本は、『中央公論』に連載していた時評をもとにしたものですが、前半は、メディア論とともにひきこもりの問題にあてられています。とくに、ひきこもりの高齢化を論じるところは、ほんとうに考え込まされる。厚生労働省が委託した調査では、ひきこもりの問題をかかえる家庭は四〇万世帯にのぼるといいます。私の友人にもこういう困難をかかえた人は少なからずいるし、その前段階とでもいえる登校拒否・不登校も少なくありません。そういうわが家も、長男は、中学のとき三年間で七〇日近い欠席がありました。二男は、欠席はそれほど多くはなかったが、低学年のころ、どちらかと言えば、「閉じこもり」系。何かあるとすぐ固まって、動かなくなったものです。世にいうコミュニケーション能力などは、厳しいものがあるのかもしれません。
ひきこもりの問題にとりくみ人たちと何人か知り合いました。ものすごい努力をされています。こういうとりくみは広がっています。が、事柄の実際の事態に対して、社会の側の理解はいまだ不十分です。さまざまな政策的なとりくみもないわけはありませんが、残念ながら効果的な手が打たれているとは思えません。もし、あと一〇年このままの事態が推移したら、ひきこもりのものすごい高齢化が進行してしまう……。保険も年金も、そういう制度から外にいる人たちです。問題を正面から問いかける議論に、私たちも真摯に参加していかなければと思います。
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