満州と自民党
1940年前後に日本でつくられた、統制経済が、戦後に日本社会の形成のベースになっているという議論がある。おおざっぱにいって著者も、この立場に立つ。本書は、とくにその戦前からの連続性を考えるさいの満州人脈の存在に光をあてる。たくさんの人物がでてきて、結構、軽くよめるおもしろい1冊になっている。なお、著者には、満鉄の調査部に光をあてた『満鉄調査部』などの著作もある。
さて、この連続性をどう考えるか。なかなか論争にもなっているおもしろい問題でもある。たとえば先日紹介した『財界とは何か』などは、むしろ、財界は、戦前の反省から、統制からの自立を志向したという立場に経っている。
実際は、どちらもあたっているのだと思う。あるときは、自立を志向し、必要なときは、官の積極的な活用を財界は志向する。ポイントとなるところで、統制の遺産を活用しながら、より財界本位の政治体制をめざしたのが財界なんではなのだろうか。など、この本を読みながら、いろいろ考える。
ただ、こと政治の面では、連続性は色濃く存在する。同時に、この本には、焦点が当たっていない、戦前の軍部からの連続性はもっと研究されていいのではないのか。そのあたりの立体的なからみもふくめ、もっと日本の戦後史の見直しはすすめられるべきだと思った。
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