白バラの祈り
映画の報道試写で、「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」を見てきました。ものすごい面白い映画でした。来年2月ごろから日比谷シャンテシネのほか全国順次公開になるそうです。これは必見の映画です。
白バラというのは、言うまでもなく、ドイツの反ナチの運動のことです。ハンス・ショル、ゾフィー・ショルの兄妹のことは、私も、本で読んだことはありました。この映画は、90年代まで、東ドイツに眠っていた取調調書などをもとに、ミュンヘン大学での反ナチのビラまきによる逮捕から処刑までの5日間を描いたものです。ゲシュタポの捜査官とのやりとり、人民裁判、そして処刑までに時間。史実に忠実に描かれていると言われています。
見ていて、正直、日本との違いに愕然としてしまいます。どうしてこんなに違うのでしょうか。
たぶん、ソフィーはどこにでもいる普通の女の子です。映画は、ビリーホリデイの音楽を聞くシーンからはじまります。そういった主人公が、反ナチ運動に加わっていることそのものが、当時に日本とはだいぶ条件がちがいます。
戦後の彼女たちの語れら方も違います。ドイツには現在、たくさんの白バラ運動を記念・顕彰する施設や場所が存在します。ほとんどのドイツ人が彼女たちのことを知っています。が、日本で、当時、戦争に反対したり、天皇制を批判した人たちのことは、戦後、ほとんど知られていません。
戦後60年。ドイツでは、現在も、正面から、ナチへの抵抗を描く映画がつくられています。先日、「男たちの大和」を見ましたが、日本で語られるのかこのようなものなのはなぜなのでしょうか。
考えてみれば、戦前の日本で、戦争に反対し、民主主義を求めた人を描いた映画なんて、山本薩夫監督の「武器なきたたかい」(山本宣治)と、今井正監督の「小林多喜二」など共産党員やその周辺の人の話ぐらいではないでしょうか。でも、もっと、よく考えてみると、これらの作品ももとになるような西口克己や手塚英孝のような原作や、それをささえる歴史研究があったかたです。無名の人々のたたかいそのものの研究などは充分ではないようにも思えます。つまり、ただ映画という問題ではなく、もっと、文化そのもの、社会そのもののありようにもかかわる問題だとも言えます。
私たちが歴史を問い直す作業をしっかりとすすめること。くり返しますが、そういうことが課せられているとこの映画を見ても思いました。
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