「歴史認識」とその「共有」
日中韓3国共通歴史教材委員会が開催した、国際シンポジウムに行ってきました。『未来をひらく歴史』は、中国・韓国・日本でどう迎えられたかをテーマにしたものでした。
中国社会科学院の歩平(プー・ピン)さん、ソウル大社会発展研究所の辛珠栢(シン・ジュベク)さん、そして日本からは笠原十九司さんがパネリスト。会場には、梁美康(ヤン・ミガン)さんや大日方純夫さんの姿もありました。
少し遅れていったので、最初のほうは聞けなかったのですが、この『未来をひらく歴史』は、中国では12万冊、韓国では4万冊、日本では7万冊の普及がなされたそうです。韓国では、政府からも高い評価をうけ、中国では、地方によっては副教材に採用していくような動きもあるそうです。中国では、旧字での翻訳出版もはじまるそうです(海賊版には頭を悩ましているそうですが)。
中国では、いろいろな制約はあるようですが、個人の資格での活動はばが広がり、そのつみ重ねの運動のひろがりもあるようです。韓国は、さまざまな場所でこの教材をつかった研究も広がっているようで、この国の新しい力を感じさせてくれます。
日本でも「つくる会」の採択を、十分には許さなかったたたかいがありました。しかし、日本の歴史認識を深め、共有していくとりくみはまだ遅れていると痛感させられます。とくに、中学や高校での、歴史教育の比重の弱まりもあいまって、若い人の間で、その認識をどう広げていくのかは、独自の努力が必要です。この次の世代に、この問題を積み残すわけにはいきません。
もちろん、そのためにも大人世代の私たちの努力こそが、いまいちばん大事なんだろうと思いました。会場には、思った以上に、若者たちの熱心に話に聞き入っている姿がありました。
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» 高文研 『日本・中国・韓国共同研究-未来をひらく歴史』 (1) [世に倦む日日]
神田三省堂本店のエスカレーターを上がった四階正面に新しく売れ筋コーナーが設置されていた。前にジュンク堂新宿店の紹介を書いたときに、そこの新刊コーナーのプレゼンテーションが秀逸だという話をした覚えがあるが、神田三省堂本店のこの試みも悪くない。四階人文書フロアのベスト10を紹介してくれているからである。神田三省堂本店の四階はやはり別格的な存在で、本を読む者にとってきわめて重要な情報発信基地である。神保町に一歩足を踏み入れれば、三省堂四階には必ず立ち寄りをしなければならない。そのコーナーで売上第一位の商品... [続きを読む]
はじめまして。初めて書かせていただきます。「未来をひらく歴史」が日本以外でそんなに売れているとはしりませんでした。わたしも仕事で生徒に紹介しているのですが,歴史を語り合うことはこれからもっと大事になっていくと思います。またおじゃまさせていただきます。
投稿: KATEK | 2005/10/14 19:56
はじめまして。コメントありがとうございます。
さっそく、KATEKさんのブログも訪問させていただきました。けっこう、同じ話題が載っていたりして、うれしくなりました。過去のものも、時間があればぜひ読んでみてください。私のは、KATEKさんのようにやさしい気持ちになるようなものではないですけど。余裕のない自分に、どうしようもないゆきづまりも感じてはいるのですが。
さて、昨日のシンポジウムでは歩平さんの発言が印象に残りました。中国では、あの教材の内容について、日本の被害を書きすぎるという批判もあるそうです。でも、歴史認識の共有は可能だというのです。そのためには、まず、歴史の事実の共有が大事だと。彼も、日本にはじめてきたときは、日本の人たちが、戦争に被害だけを強調することに反感をもったそうです。でも、二度目の来日のさい、広島にいって認識が変わったと。そんな発言が心に残りました。
投稿: YOU→KATEK | 2005/10/15 00:01