国民投票法は必要か
結局、憲法委員会は、常任委員会としてではなく、特別委員会として設置されるようです。公明党内から「常任委員会だと、憲法改正の流れが加速する」との慎重論が出たためだそうで、同調査委には憲法改正原案の審議権は付与せず、国民投票法案の審議権だけを認める方向だそうです。(「憲法調査委」は特別委に…自民、公明の慎重論に配慮(読売新聞))
しかし、国民投票法の審議がはじまるわけですから、事態は、やはり重大です。
senseさんから、 「『国会の発議』を経ての『国会の提案』と『国民の承認』について、その手続方法・判断方法を明確にすることが、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う国会議員の責任ではないだろうか」というTBをいただきました。そこで、国民投票法についての私の意見をまとめておきたいと思います。
私は、国民投票法の制定については反対だし、必要がないと考えています。
なぜなら、第一に、これが、憲法9条を改悪することを目的とした法律であるからです。自民党の新憲法第一次案を見ても、その目的が9条改憲と96条の改憲にあることは(自身も語っていますが)明白です。
しかも、第二に、この国民投票法が、憲法改正手続きを明確にするものなのかどうかという問題です。これまで、何回か、国民投票法案なるものが提示されています。しかし、そのいかなるものを見ても、たとえば一括投票か、条文ごとの投票かという肝心な論点については、先に提示されていたものは、政令で定めるとし、現在提示されているものの、別途法律で定めるとされていて、先送りされているのです。
国民投票法が制定されていないことが、国会の責任を回避しているという指摘ですが、この法律が制定されていないことがはたたして、国民の権利を何か侵害しているのかということが大事だと思います。現時点では、国民の権利を侵害しているとは考えられません。国民の議論が成熟する過程で、この法律を制定してもなんら遅くはないです。
こう考えると、改憲派の九条改憲を目的として、国民投票を制定することには問題がありすぎます。しかも、いま自民党は、新憲法制定という形で憲法「改正」を提案しようとしています。ここにはもちろん、現在の憲法がおしつけられたものだという思いが込められているのでしょうが、同時に、新憲法であるのだから、一括で国民投票にかけるべきだという思惑も見え隠れするのです。つまり、どんな国民投票法が制定されようが、実際の投票が一括でおこなうということがねらわれいることは否定できません。だから、私たちは、国民投票法には十分な警戒心をもって、接するべきだと思うのです。
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転載: http://reishiva.exblog.jp/3509092/
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はじめまして。
僕も憲法9条の改正には反対です。
けれど、9条以外に本当に主権者国民のために改正すべき条項が出てきた場合に、国民投票法がなかったらどうなるのかと考えると、苦渋の選択ながら国民投票法の制定は必要かなと考えています。
しかし、今回の法案制定の動きが9条改正のためのものであると指摘されれば本当にそのとおりで、反対される理由も良く分かりました。
投稿: つれづれ日記 | 2005/09/17 14:45