沈黙のファイル
「瀬島龍三」とは何だったのかという副題がつくている。共同通信社会部著になっているが、その中心にいたのが『渡邊恒雄 メディアと権力』や『特捜検察』などを書いたあの魚住昭氏。氏の筆になるものだけに、とても面白く、読みごたえがある。
著作自体は、いまから9年前に出版されたものだ。6年前に文庫になり、昨年、そのうち読もうと思って買っていたもの。最近の仕事との関係でも、何となく気になっていたので、ここのところパラパラと読み始めて、半分強まできている。
瀬島龍三氏は、80年代中曽根内閣の相談役を務め、その後も政治に大きな影響力を発揮した人物である。そして、周知のように戦前は、陸軍参謀本部で、太平洋戦争の作戦を直接つくった人物でもある。この本では、戦後、復興ビジネスで成功をおさめる瀬島氏の姿からスタートする。そして次の叙述される戦前の参謀本部には、服部卓四郎、辻政信など、戦後にも連なる名前が出てくる。この参謀本部の動き、主張、そしておしすすめた戦争もていねいに追っている。
太平洋での戦争の実相、そして中国での731部隊。こんな残虐な戦争をいとも簡単におしすすめた、日本の軍隊、そして日本の政治とは何だったのか。読んでいくと、たとえば東條の責任は重いが、もっと責任のある人間はいるのではないかと思えくる。そして、その全体が裁かれなかった、責任の追求がされなかったために、東條に対する免罪、ひいては日本が戦争でおこなったことにたいする免罪が生じるのではないか。
戦後、ひきずった課題はあまりにも多い。そのことに正面から向き合わなければならない。
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