BC級戦犯裁判
BC級戦犯といっても、実際にはほとんど知られていないんだろうなと思う。「私は貝になりたい」というドラマがあったけど、それを通じて知っているていどの人が多いのだろう。実際、私の連れ合いでさえ、ABCというのは犯罪の大小と思っていたようだから。BC級は1つにして呼ばれることも多いし、実際の運用ではいろいろなるのだろうが、一般的にはA(平和にたいする罪)、B(通常の戦争犯罪)、C(人道にたいする罪)というように分類される。国際軍事法廷の規程による。
さて、本書は、長く戦争責任を追求して、調査されている著者が、ていねいにBC級裁判の資料を集めて、その成果をまとめたもの、8カ国でおこなわれた日本の戦争犯罪を裁く裁判を調べている。一般にはBC級裁判は、裁判過程の不十分さばかり指摘されてきて、勝者の誤った裁判と考えている人が多いのかもしれない。しかし、実際には、フィリピンをはじめとした東南アジアや中国の現地住民にたいする虐殺などが裁かれていて、貴重な資料にもなっている。こうやって日本の軍隊のおこなった犯罪を見てみると、スパイなどの容疑での住民に対する集団虐殺、略奪や強姦というものがいかに多いかがわかる。
戦後、なぜ、こうした犯罪に日本は、国民として向き合うことができなかったのか? なぜ、こういった歴史がきちんと伝えられてこなかったのか。冷戦と、そのもとでの対米従属、アジアへの敵対と支配……。考えさせられることも多く、現在の課題を痛感させられる。
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