空疎な沖縄論でした
職場の友人が、小林よしのりの『沖縄論』を勝ってきたので、借りて読んでみました。というか、読むのは大変疲れる本で、まあとりあえず眺めたというか。
この本の主張は、沖縄の感情の根底にあるのは、反米ナショナリズムであり、氏のかかげる愛国心と共通する。本土の側の沖縄を見捨ててきた、親米保守の誤りを克服し、沖縄の側も、狭い反ヤマト感情を克服し、日本人として共通の反米愛国の立場に立とうというものといっていいでしょうか。彼の議論の特徴は、自説に都合のいいところだけを切り取って議論するということだと思います。沖縄の歴史、薩摩の支配の問題や琉球処分などの描き方は、きわめて一面的で、国内植民地といえるような差別的な運営がなされたことは十分描かれず、沖縄の進歩に役立った面が強調されます。ましてや、それまで軍隊のいなかった沖縄に、戦争末期に軍がやってきておこなったことなどは議論の対象になっていません。
戦後の描き方にしても、アメリカに付き従うポチ公的、日本政府の姿だけ描かれていて、その背後には、アメリカだけでなく、日本の支配層が主体的にアメリカに付き従い、アジアと敵対するなかで経済成長をはかっていったことなど、すべて免罪されてしまう。そのことで、保守愛国による、沖縄自立防衛論に筋道を強引につくるという議論です。
ただ、沖縄をあつかった本だけに、沖縄がかかえてこざるをえなかった政治的な矛盾の数々はある程度反映されています。カメジロウのたたかいなどは圧巻です(苦笑)。アメリカの軍事支配と、日本政治に翻弄されてきた沖縄の抱える矛盾は、偏狭な保守的ナショナリストの議論などを押し流すほど大きいのだということも感じさせてくれるのです。
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