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2005/03/24

ふたたび日韓問題

 3月23日に青瓦台のホームページに寄せられた韓国の盧武鉉大統領の対日問題に関する韓国国民へ宛てた談話の全文です。

韓日関係に関連して、国民の皆さまへ
[2005.03.23]
            佐島顕子氏の翻訳
尊敬する国民の皆さん
 国民の皆さんの憤りは、報道を通じて手にとるように見ています。そして私は、沈黙している多くの方々の胸中に秘められたもどかしさにも共感しています。
 皆さんが感じている憤りともどかしさを少しでも解ければと思い、この文を書きます。
 国民の皆さんのもどかしさは、大きな怒りと抗議にもかかわらず、希望的な結末は予想しがたいという点にあります。これまで韓国国民は、政府が微温的に対応した時も、強硬な対応をしたは良いが特にこれといった結果なくうやむやになってしまった時にも、我々の意志を貫徹するにふさわしい手段がないという状況を理解して、深く恨まず、気持ちを静めてきました。
 今回の政府の対応についても同様です。「気持ちだけでもすっきりした」とおっしゃりながらも、やはり正当な結果は期待しがたいため、もどかしく思われていることでしょう。

しかし国民の皆さん
 今度は違います。(政府は)正しく対応します。もちろん、感情的な強硬対応はしません。戦略を持って慎重に、しかし積極的に対応します。結局うやむやにするようなこともありません。遠くを見つめ、根気強く対応します。

尊敬する国民の皆さん
 日本はこれまで自衛隊海外派兵の法的根拠を準備し、今では再軍備論議を活発に進めています。これらはみな、痛ましい過去を我々に思い出させ、未来を不安にする行為です。
 しかし日本がすでに謝罪し、それを我々が受け入れ、新しいパートナーシップを宣言したのですから、普通の国々が一般的に享受する国家権能を日本だけが持てないというのは、日本国民が納得しがたいことです。このような判断から、我々は懸念を抑え、言いたいことを控えてきました。韓日関係の未来のためでした。
 はっきり言えば、謝罪とは真実な反省を前提とするとともに、それに相応する実践が伴うべきものですから、小泉首相の神社参拝は、日本の指導者たちがかつて行った反省と謝罪の真実を毀損する行為です。
 韓国政府はしかし、これについても直接的な外交争点としたり、対抗措置をとったりせず、それとなく自制を促すにとどめました。それこそ、日本の指導者たちが口癖のように繰り返す、未来志向的韓日関係のためでした。しかしながら、もうこれ以上黙過できない事態に立ち至ってしまいました。
 日露戦争とは、名称からして日本とロシアの領土をめぐる戦争のように見えますが、そうではなく、日本が韓半島を完全に手に入れるために起こした韓半島侵略戦争でした。実際、日本はこの戦争に勝利した直後、我々の外交権を強奪し、事実上の植民統治を開始しました。
 日本はこの戦争中に、独島(竹島)を自国の領土に編入しました。それこそ、武力で独島を強奪したのです。日本の島根県が「竹島の日」と定めた2月22日とは、100年前日本が独島を自分たちの領土に編入した、まさにその日なのです。それこそ、過去の侵略を正当化し、大韓民国の光復(独立)を否定する行為です。
 教科書問題も同様です。2001年、歪曲された歴史教科書が日本でほとんど採択されなかった時、我々は日本の良心に期待をかけ、東北アジアの未来について楽観的な展望も持ちました。それなのに今、その歪曲された教科書がまた息を吹き返そうとしています。これもまた、侵略の歴史を正当化する行為です。
 そしてこれらが、一自治体や一部の無分別な国粋主義者らの行為にとどまらず、日本の執権勢力と中央政府の幇助のもとに成り立っているがゆえに、我々はこれを「日本の行為」として見ざるを得ません。これは、日本がこれまで行ってきた反省と謝罪を、すべて白紙化する行為でもあります。
 今や、韓国政府も断固として対応せざるを得ません。侵略と支配の歴史を正当化し、ふたたび覇権主義を貫徹しようとする意図を、これ以上看過するわけにはいかなくなりました。韓半島と東北アジアの未来がかかった問題だからです。
 このような行為は今のところ、日本国民の大多数の考えとは違うというのが事実です。しかし、政治指導者らが扇動し、歴史をさかさまに教えることが続けば、状況はすぐに変わりかねません。

尊敬する国民の皆さん
 政府は積極的に前に立ちます。これまで政府が、日本に対して言うべき言葉や主張があっても、なるべく市民団体や被害者に任せ、沈黙してきたことは事実です。
 被害者たちの血の出るような叫びにも手を貸さず、被害者たちが真相解明のために東奔西走する時にも、ろくに手伝いませんでした。政府間の摩擦がもたらす外交上の負担や、経済にまで及びかねない波紋を考慮したこともありますが、何よりも、未来志向的な韓日関係を考えて自制したのです。
 しかしそれに対する日本からのお返しは、未来を全く考慮していないとしか思えない行動でした。今では、政府が出なかったことがむしろ、日本の無神経さを呼んだのではないかという疑問が呈されています。これではいけません。今からでも、政府ができることはすべて行おうと考えます。
 まず、外交的に断固として対応します。外交的対応の核心とは、日本政府に対して断固として是正を要求することです。日本政府の誠意ある応答は期待しにくかろう、という懸念があるにはありますが、当然言うべきことならば、(相手が)聞く時まで止めず、ねばり強く要求します。
 次に、国際世論を説得します。国際秩序とは力の秩序で、国家関係は利益が優先されるのが現実ではあります。しかし一方で、国際社会は、それぞれ皆が尊重すべき普遍的価値と秩序を強調する方向に、少しずつ進んでいるのも事実です。日本が普通の国家を越えアジアと世界の秩序をリードする国家になろうとするならば、歴史の大義に符合して身を処し、確固たる平和国家として国際社会の信頼を回復しなければなりません。
 国際社会にも日本に対して、人類の良心と国際社会の道理のもとに行動するよう促す義務があります。我々は国際社会に向かって、この当然の道理について説得します。
 これらすべてに増して大切なことは、日本国民を説得することです。問題を究極的に解決するならば、日本国民が歴史を正しく知り、日本が韓日両国と東北アジアの未来のために何をなすべきか、正しく理解しなければなりません。それでこそ、日本政府の政策が、正しい方向を捉えられるのです。
 これらは、決してやさしいことではありません。他人の過ちを表に出して指摘するようなことは、難しいのみならず、気まずいものです。互いに顔を赤らめ、対立することも増えるでしょう。ほかの国々の人々の目に、我々がそしり争うように映るのは、とても恥ずかしくもあります。
 厳しい外交戦争もありえます。そのために経済、社会、文化その他多くの分野の交流が萎縮し、それが我々の経済を冷え込ませないかという憂慮もあります。
 しかしこの問題については、大きく心配しなくてもよいでしょう。今や我々もそれなりの困難には持ち堪えられる十分な力量があると思います。そして、国家的に必ず解決するべきことのため、どうしても耐えなければならない負担ならば、毅然として耐えるべきです。しかし、耐えられない負担が生じないように、一方では状況を賢くコントロールします。

国民の皆さん
 どんな困難が生じたとしても、後退したりうやむやにしたりせず、韓国国民が受け入れられる結果が現れるまで、ねばり強く対処します。今回は必ず根を絶ちます。難しい時には国民の皆さんの助けを求めます。新しい問題が起きるたびに、国民皆さんの意見を聞きます。
 今、このような決意を国民の皆さんに報告しつつ、いくつかお願いをいたします。
 第1に、(日本の)一部国粋主義者の侵略的意図は絶対に許せませんが、だからといって、日本国民全部を疑ったり敵対してはなりません。日本と韓国は、離れられない宿命的な隣人です。両国国民の間に不信と憎悪の感情が醸成されれば、大きな不幸の再来を避けられなくなります。
 第2に、冷静さを失わず、穏やかに対応せねばなりません。対応は断固として、説得は理性的に。品位を失ってはなりません。ある程度の感情表現はないわけにはいきませんが、節度を失ってはなりません。これは、力による戦いではありません。名分を失えば、それは自分にはねかえります。感情を刺激しすぎたり侮辱する行為は、特に慎まねばなりません。
 第3に、根気と忍耐を持って対応せねばなりません。戦いという言い方をするならば、この戦いは一日二日で終わる戦いではありません。持久戦です。どんな困難であっても甘受するという悲壮な覚悟で臨み、しかし体力消耗は最大限減らす知恵と余裕をもって、粘り強くやり抜かねばなりません。
 第4に、遠くを見つめ、戦略的に対応せねばなりません。判断は慎重に、発言と行動は遅すぎるぐらいにせねばなりません。一喜一憂してもならず、人々の口をふさいでもなりません。これまで発言・行動が過剰でなかったか、という不安がなくはありません。

尊敬する国民の皆さん
 韓国国民の要求は、歴史の大義に基礎を置いています。我々は無理なことを要求したわけでもありません。新しい謝罪を要求したわけでもありません。不誠実な謝罪ではありましたが、それさえ白紙化するのはどうであろうか、と是正を要求しているだけです。そしていまだ未解決の諸問題については事実を認め、適切な措置を取るよう促しているだけです。
 私は事必帰正(すべての過ちは、必ず正しい道理に帰する。真理は非道理に勝つ。)
という言葉を信じています。私にはこれらを正しく処理する所信と戦略があります。
国民の皆さんを絶対に失望させません。
 信じて助けてください。そして勇気と自信をもってください。我々の要求は必ず、歴史から答えを得ます。
---------------------------------------
(翻訳全文以上です)

青瓦台HP
原文
http://www.president.go.kr/cwd/kr/archive/archive_view.php?
meta_id=speech&id=1c19f57eb07fa0a5c45add2

()、「」は訳者によります。

 隣国からの厳しい批判です。私たちは、これをどううめとめるべきでしょうか。
 竹島問題の資料をいろいろくってみると、この問題の複雑さがわかります。そもそも、竹島、松島、鬱陵島……。島の名前が時代によって、変化したり、入れ替わったりしていることが問題をややこしくしています。このあたりの歴史的な分析は日本のほうがすすんでいるようにも思えます。いずれにしろ、日韓が同じテーブルについて、絡まった糸をときほどくしか方法はありません。しかし。
 ここでも、問題になるのが、日本の歴史認識のありようにほかなりません。かの国の声を正面からうけとめる、理性を働かすことこそが、私たちにもとめられているのでしょうね。

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